最終更新日
Thu, Mar 13, 2008
「NBAプレイヤーの素顔」

12)危険なロジック
 2006年9月、スペインはFIBA(世界バスケ)チャンピオンに輝いた。筆者は同年11月、一年契約で外国人助っ人としてスペインに渡ったMichael Bradleyを訪れた。まず驚いたのは、スペイン・プロリーグのスピードと高さ。間違いなく、世界トップクラスにある。また、観客も熱い。まるで、NBAのPlay-offのような声援だ。NBAとの違いを挙げるなら、チームプレイの深みと、各個人のathleticism「(技量、センスといった)スポーツ競技の専門性の高さ」だろう。
 そんなスペインのプロリーグのゲーム数は、年間32ゲームしかない。ゲーム数からすると、プレイヤーには負担が少ないようにも感じるが、実は恐ろしい事実が隠されていた。筆者がアリーナを訪れたゲーム当日、Bruesaチームのキャプテンの動きがかなり鈍かった。ゲーム後、何があったのか尋ねてみると、なんと骨折していたにも拘わらずゲームに出さされていたというのだ。ヘッドコーチは「32ゲームしかないのだから、1ゲームの重みを考えろ!たとえ何があろうと1ゲームも休むことは許されない!」と全く耳を傾けないと言う。さらに驚いたことに、ゲームは一週間に1ゲームという頻度だが、練習は毎日2回も行っている。これは明らかにOverworkであり、プレイヤーに過労を与え、ハングリー精神までも損ねてしまう。NBAではあり得ないことだ。こうした環境では、外国人として来た助っ人NBAプレイヤーも嫌気をさして米国へ帰国するのは当然といえる。NBAプレイヤーが体を押してゲームに出る場合は、Play-off出場がかかっている場合、あるいはPlay-off中だ。Play-offはプレイヤーにとって、夢と挑戦であり、また、結果的にボーナスもついてくる。Play-offで最高のパフォーマンスを出すために、主軸となるプレイヤーの体はチームにとって何より重要だ。練習中や、レギュラーシーズンの前半に怪我をして、全シーズンを無駄にしたり、ましてや、Play-offで100%の力を発揮できないということの方がチーム運営として問題ではなかろうか? スペインのやり方は、一見論理的に聞こえるが、極めて危険なロジック展開だ。間違いなく、選手生命を短くしてしまう。
スペインのプロリーグで、華麗なステップ・ワークで相手を翻弄するMichael Bradley. この日Bradleyは、Left-handed dunk、reverse dunk、no look pass等、自由自在のプレイスタイルで、NBAの違いを見せつけた。
ゲーム中に足首を痛め、即座にロッカールームに引き上げるVince Carter.